高校生からの断熱定理

古典力学における断熱定理に興味を持ったのが一年半前。
初めは断熱定理の一般論を学ぼうとしたが,難しくて挫折。
次に具体的な例題を完璧に理解するところから始めようと方針転換するも,
曖昧なまま,しばらく考えていなかった。
ところがここ数日で一気に理解が進んだように思う。
丁寧に考えれば何も難しくはなくて,根気と目の付けどころの問題。
パラメータのスケールがどのような条件を満たす場合に“断熱的”と呼べるのか,それをはっきりさせたいというのが動機で,固定壁と可動壁に挟まれた一質点の一次元運動,糸の長さが変わる単振子,という二つの設定でそれぞれの場合の断熱不変量を導き,断熱定理を確認するのが目標。
断熱不変量を導く過程で,どのような極限を考えているのか,どの微小量を無視しているのかor残しているのか,をはっきりさせながら議論を進めることがようやくできた。ほとんど高校物理の力学で手に負える問題設定になったと思う。
片方の壁がゆっくり動く場合箱の中の一次元一粒子の問題は,三次元多数粒子の設定にし,統計的な仮定を置くことによって,理想気体の準静的断熱過程で成り立つポアソンの法則を導出出来る。ここで少し混乱したけれど,壁から受け取るエネルギーが箱の中の粒子たち(の各自由度)に均等に配分されるという仮定を置けばよい,ということがキーなのであった。このような扱いは久保亮五編熱学・統計力学演習の議論で知った。
一次元の箱の中の粒子の問題は高校生向けに書かれた形で出会ったのだが,調和振動子の議論については上記演習書でしか見たことが無い。
久保本の解答はすっきりしすぎているので,もっと地味に考えて,高校物理で手が届くようにしたかった。そういう地味な計算を踏まえてこそのエレガントな解答だ。

9月いっぱいは流体力学を進められるだけやる。
終盤に差し掛かったランダウ場古典も9月中に読み終えないと厳しいものがある。
そののちに,ランダウ統計物理,非平衡物理入門へと進みたいのだが...